トルコ石(turquoise、ターコイズ)は青から緑の色を持つ不透明な鉱物である。化学的には水酸化銅アルミニウム燐酸塩である。良質のものは貴重であり、宝石とみなされる。12月の誕生石でもある。
その色合いのために、数千年の昔から装飾品とされてきた。近年では他の多くの不透明の宝石と同様に、表面処理されたものや模造品・合成品が市場に出回っていて問題となっている。専門家でもその鑑定は難しい。
英語では turquoise (ターコイズ)という。この語の語源は古くはっきりしないが、フランス語の pierre turquoise (トルコの石)に由来するといわれている。これは幾分かの誤解を含んでおり、トルコでトルコ石が産出されたわけではなく、アトラス山脈周辺の砂漠で産出されたものが貿易でトルコを経由してヨーロッパへ広がったのちになじみの深い宝石になり、「トルコ石」と呼ばれるようになったとされている。
トルコ石は人類が最初に掘り出した宝石のひとつであり、歴史的な産出場所は既に多くが枯渇しているが、今日でも稼動しているものもある。これらは、鉱脈の範囲が狭く、また人里離れているために、いずれも小規模で、季節限定の操業である。ほとんどが手作業で、機械化はわずかか、またはまったくされていない。しかし、特に米国では、トルコ石はしばしば大規模な銅の採掘事業の副産物として回収されている。
少なくとも2000年以上にわたり、ペルシャとして知られたこの地域は、トルコ石のもっとも主要な産地だった。というのも、高品位の素材が最も一貫して採取されていたためである。この「完璧な色合い」の鉱脈は、イランのコラサン地方の主要都市マシュハドから25キロメートルにある標高2012メートルのアリ・メリサイ山に限られる。これらの採掘所はシナイ半島のものと合わせて、最も古くから知られている。
イランのトルコ石はしばしば長石と置き換わる形で見つかる。一般に白い斑点が付いているが、その色合いと硬さは他の産地のものより優れていると考えられている。イランのトルコ石は何世紀にも渡って採掘され、取引されてきており、おそらくヨーロッパに最初に渡ったのはイランのものであったろう。
少なくとも第1王朝(紀元前3000年頃)または恐らくそれ以前から、エジプトではトルコ石が支配半島でエジプト人によって採掘され、用いられていた。現地のMonitu人はシナイ半島を「トルコ石の国」と呼んでいた。この地域にはおよそ650平方キロメートルに渡る6か所の鉱山があり、それらすべては半島の南海岸にある。これらの中で歴史上もっとも重要なのは、セラビト・エル・カジムと、ワジ・マガレであり、知られた鉱山の中で最古のものだと言われている。前者はハトホルのための古代の神殿から4キロメートルの場所にある。
このトルコ石は、玄武岩に覆われているか、またはもともと覆われていた砂岩の中で見つかる。銅と鉄の採掘が現在でもこの地域で行われている。大規模なトルコ石の採掘は今日では採算が合わないが、鉱脈はベドウィンが自家製の火薬を使って散発的に採石している。雨が多い冬の季節には、採掘者は鉄砲水の危険に曝される。乾季ですら、無計画に採掘された砂岩の壁が崩壊して死ぬこともあるらしい。 シナイ半島のトルコ石の色合いは、一般的にイランのものよりも緑がかっているが、安定でかなり耐久性があると考えられている。しばしばエジプトのトルコ石と呼ばれているが、シナイ半島のものは一般に最も透明で、拡大鏡で観察すると表面構造には他の産地のものには見られない暗青色の円盤が散りばめられているのが見える。
イスラエルのエイラトの近くでは、トルコ石、クジャク石、珪クジャク石の魅力的な合生が見つかっている。この岩はエイラト石と呼ばれ、しばしばイスラエルの国の石とも言われる。エイラト石は現地の職人によって加工され、観光客に売られている。
米国の南西部は、顕著なトルコ石の産地である。アリゾナ、カリフォルニア(サンベルナルディノ、インペリアル及びインヨー郡)、コロラド(コネホス、エルパソ、レイク及びサガチェ郡)、ニューメキシコ(エディー、グラント、オテロ及びサンタフェの各郡)、ならびにネバダが特に豊富である(またはかつて豊かだった)。ニューメキシコ州セリロスには最も古い鉱山があるとされる。1920年代以前にはニューメキシコが国内最大の産地だったが、現在では多かれ少なかれ枯渇している。今日では、カリフォルニアのアパッチ渓谷にある一か所だけが商業的な規模で操業されている。
ここでのトルコ石は、石理か割れ目を埋める形、または小さな塊状で産出する。ほとんどが小さいサイズである。色合いと耐久性においてはイランのものと肩を並べるほど、かなり上質のものがたまに見つかることがあるが、大部分のアメリカ産トルコ石は低いグレードのもの(いわゆるチョーク状トルコ石)である。すなわち、高い鉄の含有率によって緑や黄色が強く、また一般的に脆く、人工処理しなければ宝飾品で用いることができない。 アリゾナは、価値の面では現在最も主要な産地である。鮮やかなビズビーブルーがそこの天然の品質のよい例である。アリゾナ産のものは、多くが銅採鉱の副産物として採取されている。ネバダはもうひとつの国内の大産地であり、歴史上、推定で75から100か所の鉱山が開かれた。ネバダ産のものはしばしば、いわゆる「蜘蛛の巣状の基質」を形成する魅力的な茶色や黒の褐鉄鉱の石理で特徴付けられる。
1912年にバージニア州キャンプベル郡のリンチステーションで、はっきりとした単結晶のトルコ石の鉱脈が発見された。母岩の上に晶洞を形成していたこの結晶は、非常に小さいものであって1mmは大きい方だった。1980年代まではバージニアは明瞭な結晶が取れる唯一の場所と考えられていたが、現在、これ以外に少なくとも27か所になっている。こういった試料は、コレクターに高い価値を付けられている。
利益を回収し需要に応えるための試みとして、ほとんどのアメリカ産トルコ石はある程度人工処理または強化されている。これらの人工処理には、ワックスを塗る無害な方法から、染色や浸透法のようなもっと問題のある方法まで、さまざまである。
中国は3000年以上に渡り、少量ながらトルコ石の産地だった。小さな塊状をなす宝石級の品質のものが、Yunxian、Zhushan、及び湖北省のケイ化した大理石の破片から見つかっている。加えて、マルコ・ポーロは、現在の四川省からトルコ石が見つかったと報告している。
ほとんどの中国産トルコ石は輸出されるが、翡翠に似た加工法で加工された彫刻もいくつか存在する。 チベットでは緑色のトルコ石が珍重されるが、宝石級の品質のトルコ石が、東部のDerge、及び西部のNagari-Khorsumの山から産すると伝えられている。しかし、裏づけがないことからこれらの存在は疑われている。
このほかの顕著な産地は以下の通り:アフガニスタン、オーストラリア(ビクトリアとクイーンズランド)、チリ北部(チュキカマタ)、コンウォール、サクソニー、シレジア、及びトルキスタン。
トルコ石は良質のものでもやや脆い。モース硬度では6以下。トルコ石は単結晶を作ることがほとんど無い隠微晶質鉱物なので、性質は変異に富む。X線回折によると、結晶系は三斜晶系である。硬度と同様に比重も低く、2.60?2.90である。また多孔質である(これらの性質は結晶の粒度に左右される)。トルコ石の光沢は、通常はろう光沢~準ガラス光沢である。通常は不透明であるが、薄いものでは半透明性を示すことがある。色も変化に富んでいて、白~淡青色~空色、または青緑色~黄緑色の範囲に変化する。青色は銅による発色であり、緑は不純物の鉄によるものか、または脱水によるものである。
トルコ石の屈折率は約1.61-1.62である(589.3nmのナトリウム光による計測)。この値は宝石用屈折計で得られた単一の値の中間値であるが、トルコ石がほとんどの場合多晶質であることが影響を与えている。希な単結晶標本から、1.61-1.65(0.040の差は複屈折によるもの)という屈折率が得られている。小型の分光計で吸収スペクトルを見ることができ、432nmの鋭い吸収と460nm付近の弱い吸収帯を示す(これは強い反射光で見るのがよい)。長波長の紫外線を当てると、トルコ石はときに蛍光を発することがあり、緑、黄色、明るい青などに光る。短波長紫外線やX線には反応しない。
トルコ石は一般に不溶性だが、熱した塩酸には溶ける。条痕は薄く青みがかった白。断口は貝殻状で、ろう光沢が残る。トルコ石は宝石の中では比較的柔らかいが、よい磨き粉になる。トルコ石の表面に黄鉄鉱が斑点状に分布していたり、暗い色の褐鉄鉱の筋が網目状に入っていることがある。